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TOPCIVIC PRIDE ACTION一覧味の決め手は、地域の食への誇りと手づくりの原点回帰!震災とコロナ禍を経て辿り着いた、地元に愛されるマルトの惣菜づくり

福島県いわき市|2019年〜

味の決め手は、地域の食への誇りと手づくりの原点回帰!震災とコロナ禍を経て辿り着いた、地元に愛されるマルトの惣菜づくり

マルトのお惣菜/株式会社マルト
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■概要:惣菜から広がる、地元の食と地域のつながり

福島県いわき市に本社を置く株式会社マルトは、福島県・茨城県内で地域密着型スーパーマーケット「マルト」を約40店舗展開している。地元産の新鮮な食材の仕入れと販売を重視し、惣菜部門に注力しているのが大きな特徴だ。地域の生産者が育てた野菜や海産物を積極的に取り入れ、品質にこだわった手づくり惣菜を提供。近年は、地元出身の料理人と共同開発したピザや、社内試験に合格した社員のみが製造を担うおにぎりなど、付加価値の高い商品も展開している。さらに、地元学生との商品開発や販売にも取り組むなど、惣菜売り場を起点に地域との連携を広げている。

 


いわき市内のマルトSC平尼子店では、ピザの世界大会で優勝経験のある地元出身のピザ職人 大坪善久氏(イル・タンブレッロ)の監修を受け、福島の海産物をふんだんに使ったピザを販売する

 

■背景・経緯:東日本大震災と新型コロナ禍を経て、原点回帰へ

1892年の創業以来、マルトは地元の食材を活かした手づくりの惣菜を販売してきた。しかし2011年の東日本大震災により状況は一変。電気やガス、水道が十分に使えず、家庭での調理が難しい状況が続くなか、被災地では温めや下ごしらえをせずにそのまま食べられる惣菜への需要が急増した。そこで同社は地域で唯一、店舗の営業継続を決める一方で、人手不足でも対応できるようにやむを得ず機械化や効率化を進め、生産効率を重視した体制へと転換。だがその後、新型コロナウイルスの拡大により、再び環境が大きく変化した。外食産業が打撃を受け、地域の料理人や生産者が厳しい状況に置かれるなか、同社は改めて自らの存在意義を問い直し、「地域に支えられ、地域に生かされる企業である」という原点に回帰。地元食材の活用と手づくりを重視し、惣菜部門を起点に地元の食の魅力を発信する取り組みを進めていった。

 


マルトは東日本大震災後も福島県内で新規出店を進め、帰還者や移住者の暮らしを支え続けている

 

■実績:全国規模のコンテストで6年連続受賞。地元の味としての評価も高まる

食材の選定や調理方法にこだわり、研究開発を重ねてきた結果、マルトの惣菜は地域内外から高い評価を受けている。一般社団法人全国スーパーマーケット協会が主催する、全国のスーパーやコンビニの弁当・惣菜を対象としたコンテストでは、同社の複数の商品が6年連続で受賞した。近年はお客さんから、「県外にいる家族が帰省したら、出してあげたい」「地元の味として紹介できる」といった声も寄せられている。また、商品開発の積み重ねは、社内の調理技術や地元食材への理解の深化にもつながった。さらに、仕入れや売場など部門を超えた情報共有が進み、社内の連携も強まっているという。

 


店内にはコンテストでの受賞を伝えるPOPが多く並ぶ。マルトでは、コンテストへの挑戦を、現場の意欲を高めるとともに、地元食材の価値を広く発信する場と位置づけている

 

■展望:若い世代を育て、地元の味を多店舗へ展開

マルトが今後掲げる目標は、大きく二つある。ひとつは、地元の農業高校や水産高校などとの連携を強化すること。商品開発や販売実習を通じて、若い世代が地域の食に関心をもち、将来地元で働くことを選択肢の一つとして考えるきっかけづくりを進める。こうした取り組みは、短期的にすぐ売上につながるわけではないが、地元の学生にマルトを身近に感じてもらうことで、地域の食を支える担い手の育成や、将来の顧客(ファン)の獲得にもつながる。もうひとつは、惣菜強化店舗の多店舗展開だ。現在、惣菜開発・販売の拠点は主にいわき市周辺の店舗内に置かれているが、今後は茨城県への展開も視野に入れる。より多くの人にそれぞれの地元の味を届けながら、地域の食に関わる人材の育成を進める方針だ。

 


高校生との商品開発プロジェクトでは、生徒が実際に売り場に立って試食販売や店内放送を行い、お客さんの反応を直接受け取る機会を大切にしている

 

取材者コメント(編集部 祖父江)

惣菜を起点に育まれる、
“このまちのスーパー”という当事者意識

 

今回訪れたマルトSC平尼子店では、生鮮デリカ本部惣菜部部長の星野卓司さんと営業企画部担当部長の三浦利久さんに売場をご案内いただき、お話を伺いました。惣菜コーナーには、地元産なめこと鶏そぼろを使ったおにぎりや、鮪たたきのこぼれ寿司など、品質にこだわった手づくり商品がずらりと並びます。その様子からは、惣菜が単なる「手軽で便利な食事」を超え、「わざわざ選びたくなる一品」として提案されていることが伝わってきました。実際に口にすると、思わず「おいしい!」という言葉がこぼれます。

 


地域で活躍する管理栄養士や自治体と共同開発した減塩弁当コーナーも展開している

 

もっとも、各店舗での手づくりで安定した味を届け続けるのは容易ではありません。その難しさについて尋ねると、星野さんは「家庭の料理でも、毎回まったく同じ味になるとは限りませんよね。ですから、ある程度の“味の揺らぎ”は許容しています。とはいえ、小型店では難しい工程を大型店に集約するなど、品質と効率のバランスを取っています」とのこと。理想を掲げるだけでなく、それを日々運用していくために成立させる仕組みを整える。その現実的な工夫が、売り場の品質を支えていました。

 

震災後、一定期間は風評被害もあり、「地元食材の利用を避けざるをえなかった」と話す星野さん。そのため、原点回帰として地元食材の積極活用と手づくり惣菜を打ち出した当初は、「社内には方針転換への戸惑いも大きかった」と振り返ります。手づくりを追求すれば、手間やコストがかかるうえ、その成果はすぐに数字として表れるものではありません。それでも、試食販売で寄せられた「おいしいね」というお客さんの声や、コンテストでの受賞という第三者の評価が積み重なり、徐々に社内の意見がまとまっていったそうです。

 

さらに、惣菜部門を強化したことは、社員一人ひとりの地元食材や商品への理解を深め、それが他の部門も含め会社全体の大きな力となっていきました。バイヤーも、売り場スタッフも、惣菜開発担当も、それぞれが商品の魅力を「自分の言葉で」語れる。売り場には、そんな確かな手応えと自信がにじんでいました。それは、地域の食を支える当事者としての誇り――いわば 「企業の中で育まれるシビックプライド」 とも言えるものかもしれません。

 

魅力あふれる地元の食材で、粘り強く取り組み続けること。そして、その価値を地元のお客さんに届けること。その積み重ねと循環が、社員一人ひとりの当事者意識を育て、「このまちの食を支えるスーパーである」という自覚をより確かなものにしているように感じられました。

まちインサイト5指標で見ると...

  • 指標アイコン
    創業時の思いに立ち返り、震災やコロナ禍を経て、地元食材を活かした手づくりの惣菜を改めて重視。その背景や思いが伝わる“ストーリー”があることで、地域スーパーと住民とのあいだに共感が生まれ、関係の深化につながっている。
  • 指標アイコン
    全国のコンテストでの受賞を重ね、受賞ステッカーを貼った商品が売り場に並ぶ(評価が目に見える形になる)ことで、スタッフや住民の「認められている」という意識(他者承認)を刺激し、取組をさらに前向きに進める好循環を生んでいる。

    

\株式会社マルト 星野卓司さんからのメッセージ/

私たちの取り組みは、最初から大きな成果が出たわけではありません。それでも、継続することで少しずつ道が見えてきました。今後も地元を大切にし、地域とともに歩む姿勢としての“マルトイズム”を大切に、さまざまなアイデアを持ち寄りながら、おいしい食を届けていきたいと思います!

▶公式ホームページ:https://www.maruto-gp.co.jp/

▶Instagram:https://www.instagram.com/maruto_supermarket_official/

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