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TOPTALK & INTERVIEW400年続く岡山県最大の表町商店街が進める、持続可能な商店街に向けた実践とルールづくり〈前篇〉

2026.07.06

400年続く岡山県最大の表町商店街が進める、持続可能な商店街に向けた実践とルールづくり〈前篇〉

「いつもの商店街」こそが人を呼ぶ!コミュニティが作り出す“行きたくなる”理由
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食品や日用品、洋服や本など、暮らしに必要な店が立ち並び、かつてはまちの中心地だった商店街。しかし近年は、全国的に来街者の減少や空き店舗の増加が進み、シャッターが閉じたままの通りも多い。

岡山県内で最大の規模を誇る表町(おもてちょう)商店街もまた、長年、同様の課題に直面してきたが、近年は店舗の入れ替わりが進み、新規出店の動きが活発化。さらに、商店街組織そのものの若返りも進みつつあるという。その変化はどのように生まれていったのか。

現地でのインタビューを通じて見えてきたのは、商店街という場所の価値を捉え直そうとする動きと、日常の中にある「いつもの商店街」という空気こそが、人が通い、関係が積み重なっていくコミュニティの土台になっているということ。表町商店街では、商店街を従来のような「商業の集積地」としてだけでなく、人の関係性が育まれる「コミュニティ」として捉え、明確なビジョンを共有するためのルールづくりが始まっていた。

    • 片山 進平(かたやま しんペい)さん
      協同組合連合会岡山市表町商店街連盟理事長
      岡山市表町商店街の衣料品小売店「コレクションズ カタヤマ」の3代目。2010年に30歳で、中之町商店街の理事長に就任。地権者の意識改革を進め、中之町エリアでは20店舗以上の新規出店を支援してきた。2023年には、良品計画の「無印良品」として全国初となる分散型出店を誘致。2025年、8つの商店街からなる表町商店街の連盟理事長に就任。
    • 北島 竜平(きたじま りょうへい)さん
      前職時代に岡山を訪れたことをきっかけに地域おこし協力隊の存在を知り、応募。2024年10月から、岡山県岡山市の地域おこし協力隊として、主に表町商店街北部の活性化を担当する。
    • 室屋 恭平(むろや きょうへい)さん
      岡山県倉敷市で働いていたことをきっかけに、「第二の故郷」として岡山を好きになる。2025年1月に岡山県岡山市の地域おこし協力隊に着任。主に表町商店街南部の活性化を担う。

衣料品店の3代目として、この先の商店街に抱いた危機感

岡山駅から歩いて約20分。日本三名園の一つ・岡山後楽園や岡山城にも近い中心市街地に、250店舗以上が軒を連ねる表町商店街がある。

表町商店街とは、北側の上之町商店街から中之町商店街、下之町商店街、栄町商店街、紙屋町商店街、千日前商店街、西大寺町商店街、新西大寺町商店街と、合計8つの商店街が連なる全長1kmの商店街の総称だ。岡山県内で最大の規模を誇り、江戸時代から約400年続く歴史をもつ。

アーケードにはところどころにステンドグラスが用いられており、立ち止まって見上げるのも楽しい

「表町商店街といっても、8つそれぞれの商店街で少しずつ特徴が異なります。一本道路を挟むだけで、雰囲気の違いを感じると思いますよ」と語るのは、今回インタビューに応じてくれた片山進平さん。


片山さんは2010年、表町商店街のうちの一つ・中之町商店街の理事長に30歳で就任。さらに2025年からは、8つの商店街で構成される「協同組合連合会岡山市表町商店街連盟」の理事長も務める。いわば、表町商店街全体を束ねる代表的な立場だ。

片山:私の実家は中之町で古くから衣料品店を営んでおり、商店街は生まれ育った場所。子どもの頃は祭りや新年会など、商店街単位でさまざまな催しや行事があったものです。

しかし時代の流れとともに、商店街を取り巻く環境は徐々に変化していく。近隣駅前への大型商業施設の進出やインターネット通販の拡大を背景に、地域の人々が商店街で買い物をする機会が減り、歩行者の姿も次第に少なくなっていった。

片山:20年ほど前は、衣料品店とは別に、隣でスポーツ用品店も営んでいました。そのビルの2階部分が空いたため、テナントとして貸し出そうと考えたものの、以前と同じ賃料では借り手がなかなか見つからないなと思って。自分の商売自体が厳しくなっていましたし、この場所の価値が下がってきているように感じたんです。このままでは自分の店だけでなく、商店街全体が縮小してしまう。何とかして守らなければいけない。そんな強い危機感を抱きました。

「通りを少し進むだけで、店の並びや空気感が変わる。それも表町商店街の面白さのひとつです」と話す片山さん

この問題意識が、商店街の運営に関わるきっかけになった。商店街には、各店舗の代表などで構成される理事会組織があり、日々の活動や関係者間の調整などを担っている。

片山:それまでは中之町商店街の理事会には入らず、青年部として少し手伝う程度でした。ただ、外から見ていると、理事会の運営は前例踏襲で会議を重ねているだけにも映り、改善できるのではと感じていたんです。自分の商売の先行きを考えても、このままではまずいという思いも重なりました。ちょうどその頃、理事長の人選が難航しているのを見て、「だったら自分がやります!」と勢いで手を挙げてしまって。いま振り返っても、あの時手を挙げたことに、自分がいちばん驚いています。

同じまちや商店街の出身でも、抱える思いは人それぞれ。片山さんの場合は「そのとき感じた危機感が、この商店街と深く関わるきっかけになった」と言う。

当事者以上の覚悟をもって、それぞれの事情と向き合う

中之町商店街の商店数は約90店。片山さんが理事長に就任した2010年ごろ、空き店舗は10店前後あったが、出店希望者と物件をつなぐマッチングを根気強く続け、現在は空き店舗はほぼない状態だ。

片山:中之町商店街の理事長に就任した当初は「若いし、どうせ何もできないだろう」という声が耳に入りました。それでも、現状を変えたいという気持ちが強くて、耐え続けてきたというのが本心ですね。周囲に声をかけながら仲間を少しずつ増やし、理事会メンバーの入れ替えをしました。現在は、最年長でも50歳前後。若い世代を中心とした9人の体制になっています。空き店舗への新規出店の誘致やイベントの開催など、成果が徐々に積み重なるにつれて、「何か手伝おうか」と声をかけてくれる人や、応援してくれる人も増えてきました

商店街に起きている変化について、岡山市地域おこし協力隊として表町商店街の活性化に携わる室屋恭平さんと北島竜平さんはこう語る。

2025年に大阪から着任した、室屋さん

室屋:直近でいうと、商店街の中に、長らく空室が目立っていたスナックビルがありました。ビル内の9店舗中の8店舗が空いていたのですが、片山さんを中心に交渉を継続し、いまはなんと残り1店舗を残すのみです。こうして少しずつ店が増え、人が集う場所が広がっていることが、商店街全体の景色を変えつつあるように感じます。まちの人と話していると「ここを盛り上げたい」という言葉が自然と出てくる。それは、このまちに対する誇りや愛着、いわばシビックプライドがあるからこそ生まれる言葉なのだと思います。

北島さんは「岡山に来たなら、表町商店街に行ったらいいよ」と勧められる場所にしたいと話す

北島:最近は、若い人から「中之町に出店したい」という声を聞くことが増えましたし、まちにも若い方の姿が目立ってきたと感じます。新しいお店ができて、人が行き交い、にぎわいが生まれる。そうした動きが、新しい人を呼び込む循環につながっているように思います。

そのスナックビルは、片山さんが3年ほどかけて地権者と対話を重ね、何度も内覧し、新規店舗の誘致につなげたという。

夜になると賑やかな声が響く、スナックビル「サントリータウン」。表町商店街にとってシンボリックな建物の一つ

片山:僕は理事長に就任したタイミングで、中之町商店街の全店舗を一軒ずつ回って挨拶をしました。その中で、「店舗が空いている理由は一つではない」ということを学んだんです。良い借り手に出会えていない、何から手をつければよいか分からない、片付けが進まないなど、それぞれに事情がある。だからこそ、何が課題なのか、どうすれば前に進めるのかを対話しながら、一つずつ解決していくことを大切にしています。

挨拶回りの目的は、空き店舗や空き地の状況を調べることではなく、若くして理事長に就任したことへの報告と挨拶だった。しかし、一軒一軒訪ねて話をし、関係性ができていく中で、次第にさまざまな相談や声が寄せられるように。片山さんは、この経験を「商店街のつながりの分母が広がった時間だった」と振り返る。

片山:少しずつ、空き店舗や空き地について、「貸したい」「売りたい」といった相談を受ける機会が増えていきました。僕は物件の調整や片付け、関係者とのやり取りまで、すべて一緒に動いていくことにしました。それくらい深く関わらないと、物事が前に進まなかったということもありますが、自分たちの商店街のことなので、「寄り添う」や「伴走する」というよりも、自分が当事者、あるいはそれ以上の気持ちです。

リーダーの役目は「頭脳を使い、決めること」

片山さんは2025年から「岡山市表町商店街連盟」という、表町商店街全体の理事長にも就任。8つの商店街を束ねる立場となった。

片山:商店街は、それぞれで雰囲気や特徴も違えば、抱えている課題も異なります。だからこそ、全体として目指すべきビジョンを自分の中で定めて、皆に伝えているところです。

しかしそのビジョンについて、片山さんは商店街を新しくデザインしていくような視点では考えていない。商店街のこれからを考えるうえで、片山さんが何より大切だと語るのが「コミュニティの価値」だ。時代や環境が変わり、商店街に求められるものが変わってきていると続ける。

片山:僕がここで生まれ育って、何が良かったかと振り返ると、コミュニティがあったことなんです。商店街単位で祭りや旅行、新年会や忘年会など、日頃から多くの人と顔を合わせる機会があり、困ったときには助け合えるつながりが築かれていました。しかし、そうしたコミュニティは少しずつ失われつつあります。その結果、空いている土地や物件は、不動産価値や地価だけで見られるようになる。つまり、売れるか売れないかだけが判断基準になってしまう。そうではなく、ここで長い時間をかけて育まれてきたコミュニティを守っていきたい。僕にとっては、子どもの頃の商店街の思い出が、いまの活動の原点になっています。

片山さんは、「とりあえず商店街に行ってみよう」と自然に足が向くような、歩くだけで楽しい表町商店街を目指したいと話す

片山さんが言うように、不動産価値や地価を経済原理だけで測ろうとすると、商店街に宿る「コミュニティ」という目に見えない価値は換算されないまま、平米単価だけで評価されてしまう。数字では測れない部分こそ重要だという前提に立ち、定量化しにくい価値を守る。そこで今、力を入れているのが、商店街を持続的に活性化していくための仕組みづくりだ。「あるべき姿に持っていくには、システム化するしかない」と片山さんは続ける。

片山:ときどき「理事長なら、もっと現場で汗をかくべきだ」と言われることがあります。ただ、僕は理事メンバーは、意思決定を担う頭脳であるべきだと思っていて。だからこそ、いま整えようとしているのが、商店街で店舗を所有・運営するうえでの責任や指針となるルールです。土地が空いたからといってすぐに駐車場にしない、価格だけで売買を判断しないなど、これまで暗黙の了解として守られてきた考え方を明文化する。それが、表町商店街という商業空間を守ることにつながるのではないかと考えています。

とはいえ、制度やルールを整えて空き店舗を埋めることは、手段であって、目的ではない。片山さんの目的は、かつての商店街に流れていた空気や、人の動きそのものを取り戻すこと。だからこそ「コミュニティ」とは、店舗に関わる人たちだけを意味するのではなく、この商店街を訪れるすべての人を含む、より大きな意味をもっている。

片山:たとえ買い物の用事がなくても、つい足を運んでしまう。昔の商店街には、顔なじみの人と立ち話をしたり、店の人と声を掛け合ったりと、「行きたくなる理由」がありました。僕は、その空気をもう一度取り戻したい。長い時間をかけて関係や風景が変わってきたのだから、築き直すのにも長い時間がかかるでしょう。途方もない挑戦ですが、誰もやらないのなら自分がやって、少しでも理想に近づけて後輩たちに手渡すのが使命だと思っています。

20年越しの閉店セールに、無印良品の路面店。商店街を歩くなかで見つけた、新たな試み

話を伺った後、地域おこし協力隊の二人の案内で表町商店街を歩いた。道すがら、通行人や店員から次々と声がかかり、地域の中でのつながりが自然と感じられる。

通りの両側には、地元デパートや時計店、衣料品店など昔ながらの店が並ぶ一方で、本屋などの新しい店も違和感なく溶け込んでいた。この商店街には、いわゆる大型の目玉施設があるわけではない。それでも、日常的な人の動きが確かにあった。

北島:このお店は、約20年前に閉店した食器店なのですが、先日改めて「閉店セール」を行いました。急な事情で店を閉めることになったため、商品が手つかずのまま20年以上も残っていたんです。亡くなられた店主の娘さんが「父が集めた品を誰かに使ってほしい」と話されて、まちの人々と一緒に掃除をして整え、店を開けることにしました。当日は入店待ちの行列ができるほどの盛況ぶりでした。

今では入手が難しいレトロな食器が数多く並び、思わず店内に長居してしまう。

さらに歩くと、商店街の中央部では大規模な古着のポップアップイベントが開かれていた。聞くと、主催者は室屋さんだという。着任1年目の隊員がこれほど大きな規模のイベントを企画・実行していることに驚く。同時に、地域に溶け込み、周囲がそれを受け入れていくスピードの速さも印象的だ。

「その一着に、物語がある」をコンセプトに開催された、古着のポップアップイベント

商店街やまちの活性化というと、外観を一新したり、「昭和レトロ」のようなわかりやすいコンセプトを打ち出したりと、目にみえる変化が注目されやすい。しかし、表町商店街に足を運ぶと、印象はむしろ「普通の商店街」だ。

けれど、その「いつもの商店街」という空気こそが、人が通い、関係が積み重なっていくコミュニティの土台になる。表町商店街では、さまざまな人が関わる場が増えることで新しい挑戦が生まれ、まちの日常に少しずつ変化が生まれている。片山さんの「コミュニティを守りたい」という思いは、商店街のあちこちで形になりつつある。

無印良品の路面店は、あまり見かけないだけに新鮮に映る

〈後編〉では、片山さんが誘致に尽力した、表町商店街に全国初となる「分散型出店」として2店舗を同時オープンした無印良品のお二方に、出店の背景と、この商店街で目指す姿について話を聞いた。

(取材:山下/文:土橋)

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