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TOPCOLUMN「かのや100チャレ」の審査を通して思う、地域外の中高生が鹿屋市のシビックプライドを考えるということ。

2024.03.15

「かのや100チャレ」の審査を通して思う、地域外の中高生が鹿屋市のシビックプライドを考えるということ。

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今年度、「シビックプライド」をテーマに開催された、鹿児島県鹿屋市の政策アイデアコンテスト「かのや100チャレ」。鹿屋市が抱える課題に全国の中高生が挑む姿を、審査員として約5か月にわたって関わってきた体験から、考えさせられたことや感じたことをコラムとしてお伝えします。

  • 水本 宏毅
    YOMIKO 都市生活研究所 エグゼクティブリサーチディレクター
    福岡県大牟田市出身。営業職として入社後、不動産デベロッパーの再開発事業や住宅プロモーションを担当。現在はシビックプライド研究や国内外の都市研究などを通じて、自治体のプロモーション業務やセミナー、講演会等を実施。高校生の頃に「めんたいロック」にハマり、大学上京後にバンドを組むも東京色に染まり挫折。それでも、多数のミュージシャンを輩出している福岡の音楽文化には、今でも愛着や誇りを感じている。共著「シティプロモーションとシビックプライド事業の実践」(2019年 東京法令出版)

「かのや100チャレ」概要

●「かのや100チャレ」は、鹿屋市のことを市外の若い世代を中心にもっと知ってもらうために、全国の中高生に市の課題にチャレンジしてもらう政策アイデアコンテスト。東京や横浜など首都圏の学校を会場に開催される。
●第10回の記念大会にあたる今年度は、「かのやシビックプライドプロジェクト~鹿屋に関わる全ての人が鹿屋市のことを好きになる取り組みを導き出せ!」をテーマにアイデアを募集。
●シビックプライドが「かのや100チャレ」のテーマとなった背景には、鹿屋市の人口減少対策ビジョンの4つの重点プロジェクトの一つにシビックプライドが位置付けられていることがある。
●本選上位2チームには鹿屋市への表彰旅行と市長や関係者に直接プレゼンテーションを行う機会が与えられる。

※審査会の様子については、「かのや100チャレ」ホームページもあわせてご覧ください。

審査員を引き受けるにあたって感じた戸惑いと不安

正直に言うと、審査員の依頼を受けた時は、「鹿屋市のシビックプライドを、鹿屋市に住んでいない中高生に考えてもらうなんて、鹿屋市も思い切ったテーマを出すもんだなぁ…」と今回のテーマ設定に少し戸惑いを感じた。市民である市内の中高生が考えるならまだしも、アイデアを提案するのは、ほとんどが鹿屋市に行ったことがない中高生。ましてや、シビックプライドという地域の人たちの気持ちを扱うテーマは、彼らにとってかなり難しいはず。「これは大変な審査を引き受けてしまったかもしれない」と少し不安に思った。そもそも、シビックプライドとは何なのか。アイデアを募集する前に、おそらく「シビックプライド」という言葉を聞いたことがないと思われる中高生に少しでも理解してもらうために、オンラインで開催された「テーマを探るワークショップ」で話をする機会をいただいたのだが、どれくらい理解してもらえたのか、今ひとつ自信が持てなかった。

オンライン開催された「テーマを探るワークショップ」

審査基準を見直すきっかけとなった1次審査会

審査は1次審査と本選審査の2回に渡って行われる。1次審査には、関東、関西、中部、北陸地区から15校22チーム、100名以上が参加。アイデアの骨子をA0サイズのポスターを使ってプレゼンテーションするスタイルで実施された。
出てきたアイデアは、スポーツ、音楽、食といったイベント企画や宿泊体験、まちを使ったゲーム企画など、バラエティに富み、地域資源を活かしているものも多く、「鹿屋市のことをよく調べているな」と感心させられた。
しかし、シビックプライドというよりも市外から人を呼び込むための単なるイベント企画で終わっているアイデアが多く、これが私たち審査員を悩ませることになった。 かのやを好きになる、“かのやファン”を増やすという課題には応えているのだけれど、どこか市民が置き去りになっている。このままだと、本選審査では、単純に面白いイベント企画が上位に選ばれることになってしまうのではないか…。
そこで私は、1次審査を通過した11チームに、「本選では、“住んでいる人自身”にまちに関わってもらうためのアイデアをもう少し深堀してほしい」とお願いすることにした。また、鹿屋市職員の方とも話して、本選審査では「市民参加」や「市民の主体性」を促す計画となっているかを審査の評価基準に加えるなど、市民を意識したアイデアを考えてもらうための見直しを行った。

A0ポスターを使って企画の概要をプレゼンテーションする1次審査会の様子

白熱の本選審査会~ブラッシュアップされたアイデアと中高生の本気度に感銘

1次審査から2か月半後、本選審査は東京にある学校のホールで行われた。各チームとも企画提出期限ギリギリまで考え、ほとんどのチームが、1次審査会の最後に私がお願いした、住んでいる人たちのシビックプライドを高めるためのアイデアを加えたブラッシュアップ案を出してくれた。
チームの中には、鹿屋市の地域特性、アイデアを裏付ける客観的なデータや事例、実施に当たっての費用や財源まで、中高生とは思えないほど内容の濃い提案をするチームや、企画に使うスマホアプリのデモ版を自ら作成する程チカラの入ったチームもあった。

本選審査では、それぞれのチームが10分間の持ち時間を使い、趣向を凝らしたプレゼンテーションを行う。興味深かったのはプレゼン後の質疑応答である。はじめに審査員からの質問に答え、次に他校の参加者、いわゆるライバルからの質問にも答える必要がある。質問に対する受け答えも審査の評価基準になっていることもあって、ライバルからは「いやいや、そこを突っ込むの?」と審査員が遠慮して出来なかったような手厳しい質問が容赦なく飛ぶ。もちろん、受ける側も想定される質問と回答を事前に用意し、それに負けまいと答える。彼らの白熱したやり取りから、アイデアへの思い入れや本気度が伝わって来る。惜しくも優勝を逃したチームの中には、思ったようなプレゼンが出来ず、悔しさで目に涙を浮かべる生徒もいた程で、まるでプレゼン甲子園といった様相に感銘を受けた。
参加した生徒からは、「どのチームも予選に比べてかなりブラッシュアップされていると感じた」、「鋭い質問も多く、違った視点から物を見るという点で得るものが多かった」との感想が上がっていた。

最終的に優勝したのは「かのやファン俱楽部向上案」を提案した本郷学園チーム。サイトやイベントを介して外部や地元の“かのやファン”をつなぐ仕組みが評価された。表彰式の後に開催された懇親会では、白熱した本選審査とは異なり、参加したチーム同士が談笑したり、鹿屋市の特産物をゲットするためのじゃんけん大会を楽しんだり、緊張から解かれて、和気あいあいとした中高生の姿に私も和まされた。

左:優勝した本郷学園チーム  中・右:懇親会、鹿屋市の特産物を賭けたじゃんけん大会の様子

地域“外”の中高生が鹿屋市のシビックプライドを考える意義

冒頭で、鹿屋市のシビックプライドを地域外の中高生に考えてもらうというテーマに少し戸惑いを感じたと書いたが、実際に審査員として参加させていただいた今では、地域外の中高生が考えるという行為には意義があり、また、シビックプライドに及ぼす効果として2つ考えられるのではないかと思っている。

ひとつは、地域外の中高生のアイデアが地域の人たちのシビックプライドを刺激することに繋がるのではないかという点。普段、地域の人たちと、まちの情報を発信するためのワークショップをしている時に、「あなたの住むまちの魅力は?」と尋ねても、皆さんすぐに答えられないことが多い。なぜなら、地域の人たちは、普段、何気なく生活しているがゆえに、地域の魅力になかなか気付かないからだ。そのような時は、やはり「外からの目」が必要となる。地域外の中高生のアイデアがきっかけとなり、鹿屋市の人たちがまちの魅力に気付き、活動が引き起こされることによって、シビックプライドが高まるという効果は十分に期待できると思っている。
実際、昨年度の「かのや100チャレ」(テーマ:鹿屋市の尖ったお土産を創り出せ!)では、地域外の中高生から提案されたアイデアをもとに、数種類のスイーツが実際に商品化されている。外からの目には地域の人たちを動かす効果がある。

ふたつ目は、普段、地域のことを考える機会が少ない中高生たちが、「かのや100チャレ」に参加して、まちのことを考えること自体が、将来的に自分たちのまちに対するシビックプライドを育むことに繋がるのではないかという点。今回参加した生徒からは、「鹿屋市を初めて知って、約半年でたくさんのことを調べて発表準備をした。様々な高校のアイデアを聞いて、市の政策に関わる大変さと、楽しさ、充実感を知ることができた」という声が寄せられている。
また、かつて「かのや100チャレ」に中学3年生から高校2年生まで3回参加した大学生が、大学で研究している地域振興に関する自治体の事務について学びたいと、鹿屋市のインターンに参加した事例もあるそうだ。「かのや100チャレ」の経験から、まちに興味を持ち、考えるようになり、今度は生徒たち自身が住む地域を「ワクワク面白いまち」にすることにチャレンジする。その輪がどんどん広がって、シビックプライドのある地域が各地に生まれて行くことを期待せずにはいられない。
このようなイベントに審査員として参加する機会をいただいた鹿屋市職員の皆さん、そして、参加してくれた中高生の皆さんに感謝したい。

本選審査会後の記念写真

※写真提供:鹿屋市ふるさとPR課

(文:水本)

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