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TOPCIVIC PRIDE ACTION一覧幕末の藩校を現代にアップデートした、若者の未来への「道」をひらく学び場

佐賀県|2017年~

幕末の藩校を現代にアップデートした、若者の未来への「道」をひらく学び場

弘道館2~藩校しようぜ/佐賀県庁県民環境部まなび課
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■概要: 佐賀の未来を拓き、担う人を育てる“まちなかの学び舎”

「弘道館2」は、幕末の佐賀藩に実在した藩校「弘道館」を現代版にアップデートした学びの機会。校舎を持たず、佐賀城本丸歴史館、旧唐津銀行、古民家カフェなど“佐賀にゆかりのある講師にちなんだ場所”で開催されるポップアップ型の藩校だ。
佐賀県庁県民環境部まなび課が中心となって運営し、佐賀の若者たちをはじめ、子どもや大人まで、新しい学びの場を、県内各地で生み出している。
佐賀県では、「人を大切に、世界に誇れる佐賀づくり」というビジョンのもと、さまざまな事業に取り組んでいる。また、2024年には「人づくり大県 さが」をうたう「佐賀県教育大綱Vol.3」が策定され、次の3つの柱が掲げられている。

  • ① 高い志と佐賀に誇りを持った、骨太でたくましい子どもを育てる
  • ② 豊かな感受性や、人を想う優しさを持った子どもを育てる
  • ③ 佐賀の未来を担う、多様な個性を持った人材を育てる

地域をつくるのも、未来を担うのも“ひと”。この考え方を、学校教育の枠を越えた「学びの実践」として具体化しようとした取り組みが、「弘道館2」である。

 


「発信学」「絵で世界とつながる学」「伝統って、なんだろう?学」など、ユニークな授業が、各界のオピニオンリーダーによって行われる

 

■背景・経緯: はじまりは、ひとりのクリエイターの問いかけ。

構想のきっかけは、佐賀県と、長年佐賀に関わってきたクリエイティブディレクター・倉成英俊(くらなり・ひでとし)さんとの出会いだった。2010年代、佐賀県庁が主催するイベント「勝手にプレゼンFES」を通じて佐賀ゆかりのクリエイターが集まり、佐賀の未来を語る中で、倉成さんは佐賀藩の藩校「弘道館」に着目する。弘道館では当時からすでに、いま世界で重視されているアクティブラーニングや主体性を育てる学びが実践されていた。「この精神を引き継ぎ、現代にアップデートできないか」——その問いから生まれたのが「弘道館2」だ。

 


「弘道館2」の“お目付け役”クリエイティブディレクター倉成氏のプレゼンの様子(2016年)

 

■実績: 佐賀のまちと日常が、新たな学び舎に。

「弘道館2」は、「まち全体が弘道館」という発想で、城や神社、カフェ、酒蔵、図書館、スタジアムなど、テーマや講師にゆかりのある場所で開催される“ポップアップ型”の学びの場。
2017年度にスタートし、これまでに43回開催されている。当初は中学生〜20代前半を中心としていたが、現在では小学生向けや大人向けの回も生まれ、参加層は拡大。1回あたり20〜40名ほどの対面参加を基本としつつ、オンライン配信やアーカイブも活用している。
「弘道館2」が大切にしているのは、弘道館の「道を弘(ひろ)げる」という名前の通り、「若者の夢のきっかけをつくり、世界を広げる」こと。講師には、アーティストや職人、起業家、研究者など、さまざまな分野で挑戦を続け、かつ佐賀に強い思いを持つ人たちが招かれる。
一方的に教えるのではなく、参加者とフラットに語り合うスタイルを通して、若者が自分の関心や可能性に気づく場をつくっている。

 


(左)八谷和彦 先生による「破壊的イノベーション学」の様子
(右)通訳・女優の上戸恵美先生による「生き方自体が映画!学」の様子

 

■展望:「定住」よりも、「関わり続ける」つながりを

7〜8年の継続の中で見えてきたのは、「参加者のその後」に表れる変化だ。
「弘道館2」では、参加人数や移住者数といった数値目標を大きく掲げてはいない。大切にしているのは、「あの場があったから、視野が広がった」「佐賀の見え方が変わった」といった、「一人ひとりの内側に残る変化」。
例えばある参加者は、自分の好きなもの・やりたいことを言語化できるようになり進路選択の背中を押されたと語る。また別の参加者は、他校の生徒と話す中で、自分の当たり前が当たり前ではないことに気づき、視野がひらけたと感じている。そして、かつての参加者が企画側に回り、下の世代の“先輩”として場を支える——そんな循環も少しずつ生まれはじめている。
若年層流出は、佐賀にとっても大きな課題だ。しかし「弘道館2」では、定住促進を目的に掲げるのではなく、「佐賀との多様な関わり方」を育てることを重視している。県外に出ても、いつか何らかの形で佐賀と関わり続けてくれたらいい。そんな思いで、これからも多くの「関わり続けるつながり」を生んでいく。幕末に弘道館で学んだ大隈重信(おおくま・しげのぶ)や佐野常民(さの・つねたみ)らの若者たちが、その後日本全国・海外で活躍しながら佐賀ともつながり続けたように、この「弘道館2」が起点となってできた道は、その先どこへ向かっていっても佐賀とつながり続けている。そんな未来を思い描きながら、これからも若者たちの“道を弘(ひろ)げて”いきたい。

 

取材者コメント(YOMIKO コミュニティクリエイションビジネス局 中村賢昭)

個々の思いが連なり、
シビックプライドが育つ「土壌をつくる」

 

今回取材に協力してくれた、佐賀県庁の平野さんと野方さんに「弘道館2」の話をうかがって印象的だったのは、「続けること」そのものを目的化するのではなく、「続いていくための土壌」をどう育てるかを大事にしている点でした。

 


「弘道館2」の取り組みについて語る、佐賀県庁県民環境部まなび課課長の平野さん(右)と主査の野方さん(左)※インタビュー時

 

若者にとって、「弘道館2」に一度参加してみる、という一回性の体験がすぐに移住や起業といった“わかりやすい成果”に直結するとは限りません。でも、「佐賀って、思っていたより面白いかも」「自分の夢を応援してくれる大人がいるかも」という実感は、その人の中に長く残り、いつかどこかで、佐賀への関わり方として花開いていくのだと思います。

 

一方で、自治体の事業を「続けていくための土壌」を育てるのは容易なことではありません。人事異動が多く、担当が変わるたびに企画が途絶えてしまう——そんな悩みを抱える自治体も多いのが現実です。

 

それでも長く続けられている要因は、運営主体である「県民環境部まなび課」が、常に学びの場を「アップデートし続ける」姿勢を崩さずにいることだと感じました。

 

学びを提供するだけではなく、活動を通して運営主体自らも学び、それを活かしたブラッシュアップを行っていく取り組みのあり方は、他の自治体からも注目されていて、視察や問い合わせも増えてきているといいます。

 

幕末の弘道館がそうであったように、「弘道館2」もまた、「人が育ち、つながるための土壌」をつくる取り組みです。そしてシビックプライドとは、「このまちが好きだ」「誇りに思う」といった個々の気持ちが連なり、まちを支える“土壌をつくる”いとなみそのものでもあります。“思い”が人から人へ、世代から世代へつながりながら、シビックプライドという土壌は徐々に耕され、深まり、醸成されていきます。

 

「弘道館2」は、その土壌づくりの具体的な手法やプロセスが多く示されている好事例でした。

 

(取材・文:中村)

まちインサイト5指標で見ると...

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    参加住民の未来や人生に刺激や影響を与えてくれ、視野を広げてくれる学びの機会をまちなかで提供
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    佐賀の歴史上、重要な位置を占める「弘道館」という資産を活かして現代版にアップデートしている

    

\県民環境部まなび課からメッセージ/

佐賀県では、これからも『若者の未来への「道」をひらく学び』を提供し続けます。 これまで弘道館2で開催したすべての講座は、アーカイブ動画として公開中です! 佐賀県だから出来る特別講座を、ぜひ、ご覧ください!

▶弘道館2:https://www.kodokan2.jp/

▶弘道館2「目付役」 Creative Project Director倉成英俊さん:https://www.creative-project-base.com

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