\富山県知事政策局企画室ウェルビーイング推進課長 佐渡洋伸さんからのメッセージ/
「幸せ人口1000万人」を掲げる私たちにとって、県外から人が訪れ、つながりが生まれることには大きな意味があります。だからこそ、もし私たちのウェルビーイングの取り組みをきっかけに富山を訪れていただけたら、嬉しい限りです。その際はぜひ、歴史や自然の魅力に触れながら、美味しいお寿司も楽しんでください!
▶富山県/富山県ウェルビーイング指標:https://www.pref.toyama.jp/101741/toyama-wellbeing-indicator.html
▶富山県 わたしの、みんなのウェルビーイング・アクション!:https://wellbeing.pref.toyama.jp/
■概要:“幸せ人口1000万人”を目指し、県政にウェルビーイングを取り入れる
富山県は2022年に「ウェルビーイング」の概念を県政に取り入れ、県独自の指標を策定・公開し、ウェルビーイングに基づいた施策の立案と実施を進めている。ウェルビーイングは一般的に「身体的・精神的・社会的に満たされた状態」と定義される。県は、富山に関わりをもつ関係人口を含めた数として、「幸せ人口1000万」を成長戦略ビジョンとして掲げ、県民や富山県に関わる人がウェルビーイングを実感し、さらに高められる地域をつくることで、県に住み続けてもらうだけでなく、県外へ出た人のUターンや新たな移住者・関係人口を呼び込むことを目指している。
■背景・経緯:人口減少と少子高齢化対策として、新たな成長戦略を策定
富山県が県政にウェルビーイングを取り入れる契機となったのは、2021年2月に設置された「富山県成長戦略会議」。富山県は他の地方都市と同様に人口減少や少子高齢化といった課題を抱え、ピーク時に約112万人だった人口は減少していた。こうした状況を受け、民間出身の知事が新たに就任したタイミングで、同会議を発足。県内外の有識者により、県の将来のビジョンや戦略について約1年にわたり議論を重ねた中、2022年2月にウェルビーイングを中心に据えた戦略が策定された。

成長戦略ビジョンでは「幸せという大きな傘のもと、関係人口1000万人を目指す」ことが掲げられている
■実績:ウェルビーイングの認知度が4年で約51%まで上昇
富山県は、ウェルビーイングの概念を具体的な施策に落とし込むことを目指し、2022年に県民意識調査を実施。その結果をもとに富山県独自の「ウェルビーイング指標」を策定した上で、県民が自らの状態を把握できるツール「あなたのウェルビーイング・チェック!」を開発した。利用者数は約1万人にのぼる。一方、県庁内においても、ウェルビーイングを起点とした施策立案や予算運用を推進するため、データを蓄積し、分析できる「ダッシュボード」を構築。こうした取り組みもあり、2021年に約16%だった県民内のウェルビーイングという言葉の認知率が、2025年には約51%まで上昇した。

「あなたのウェルビーイング・チェック!」では、結果を表す全体像を花に見立て、
自分のウェルビーイングの状態を視覚的に把握しやすいようにした。
■展望:“見える化”から、“活かす”段階へ
富山県では今後、可視化されたウェルビーイングに関する指標や数値をどう具体的に生かしていくかが重要なテーマとなっている。そこで、ダッシュボードを使いやすく整備し、市町村での活用を促すほか、企業でも活用できるよう検討を進めている。また、大企業は自前でエンゲージメント調査などを行うことが多い一方で、中小企業ではそこまで手が回らない場合も少なくない。こうした企業もウェルビーイングの向上に取り組みやすいよう、「あなたのウェルビーイング・チェック!」の普及を進める方針だ。
取材者コメント(YOMIKO都市生活研究所 関)
分析によって見えてきたデータや数値といかに向き合うか
「あなたのウェルビーイング・チェック!」を私自身も試し、手元に結果の数値を持って臨んだ今回の取材。当初は「富山県がどのように県民のウェルビーイングを高めようとしているのか」を探るつもりでしたが、実際にお話を伺うと、その考えは大きく変わりました。ウェルビーイングという抽象的なテーマを、まずは指標やデータとして“見える化”したうえで、数値を上げることを目的とするのではなく、その数値自体をどう捉えて活かしていくべきかを模索し、見極めている段階にあったのです。
一度“見える化”された数値は、しばしば「上げること」自体を目的としてしまいがちです。しかしウェルビーイングは、単に数値を追いかけるのではなく、定義を何度も問い直し、対話を重ね、時間をかけて育てていくもの。また、可視化されるとつい周囲と比較することに意識が向いてしまいますが、ウェルビーイングとは本来、他人と比べるものではなく、自分の状態をどう受け止め、どう向き合うかにこそ意味があります。
富山県知事政策局企画室ウェルビーイング推進課の山本さんが語った「ウェルビーイングは押しつけがましくなってはいけない。自分の中から自然に芽生え、意識してもらうきっかけや後押しとなるような取り組みを意識している」という言葉に、強く共感しました。
今回伺ったお話は、シビックプライドのリサーチにおいても、非常に示唆に富むものでした。シビックプライドという概念をどのようにデータや指標として可視化し、どう生かしていくのか。“見える化”の先にあるその向き合い方こそ、これからのまちの幸せを考える上で欠かせない視点だと感じました。
