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石川県野々市市|2023年~

逆六次化産業プロジェクト/野々市市

飲食店が畑を耕し、まちの未来に“種”を蒔く
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■概要:「逆六次化産業プロジェクト」とは?

「逆六次化産業プロジェクト」は、石川県野々市市にて2023年から始まった、地元飲食店と商工会による農業の取り組み。一次産業である農家が加工・流通・販売までを担う一般的な“六次産業化”とは逆に、飲食店が主導して農業に取り組むことから「逆六次化」と名付けられた。
生産された作物は、生産者である飲食店への納品があらかじめ決まっているため、廃棄ロスを抑制できるとともに、納品先の確保という安心感から、品種の選定や栽培方法の工夫といった実験的な取り組みにも踏み出しやすい仕組みとなっている。

 

■背景・経緯:はじまりは、飲食店オーナーの“安定して野菜を仕入れたい”という声

野々市市では遊休農地が多く、市内で栽培されている野菜がほとんどないという課題があった。一方、飲食業界では、天候や需給バランスによる仕入価格の変動が大きく、安定した供給体制の必要性が高まっていた。
こうした背景のもと、飲食事業者「おまめ舎」代表・久木誠彦さんが構想を立ち上げ、野々市市商工会の桝谷泰裕さんが体制構築や関係者間の調整をサポートして、プロジェクトが始動した。

 

■実績:農地から食卓へ、飲食店が共同で届ける地域の秋の味覚

飲食店が地元農家や農業法人から農地や機械を借り受け、栽培技術の指導を受けながら、自店で使用する野菜を育てる。作付けする作物は店舗のニーズに応じて決められ、収穫物は飲食店で提供される。2024年10月には玉ねぎや枝豆を収穫し、枝豆は「野々市秋枝豆」として、市内7店舗が共同で「野々市秋枝豆ウィーク」を実施した。

 

 

■展望:“青いトマト”からシェア畑まで、広がる可能性と地域連携

今後は、飲食店の細かなニーズに応じた作物の開発や品種改良、遊休農地のさらなる活用が見込まれている。たとえば、とある飲食店経営者からは「熟す前の青いトマトを揚げると美味しい」という理由で、「トマトを青いままの状態で納品できないか」という要望が挙がった。「一般的には未熟と見なされ、市場価値のない青いトマト。しかし、明確な用途とニーズがあるならば、それに応じた栽培体制や品種改良にも挑戦したい」と久木さんは話す。また、市民が関与できる「シェア畑」や、県立大学との連携による研究・開発の推進も視野に入れている。

 


地元の飲食店、農家、消費者、県立大学など、様々な立場の人々がプロジェクトに関わっている

 

取材者コメント (編集部 小関)

飲食店のニーズに応える野菜を育てる。逆転の発想で生まれた“市産市消”プロジェクト

 

「逆六次化産業プロジェクト」を運営する久木(きゅうき)さんと桝谷(ますたに)さんにお話を伺い、実際に畑を案内していただく中で印象的だったのは、“構想”と“実践”を同時に動かすことの重要性でした。飲食店を営む久木さんは、日々野菜を扱う立場でありながら、「なぜ同じ野菜でも天候や時期によってここまで価格が変わるのか」と、野菜や農業について知らないことや不思議が多かったと話します。そうした疑問を出発点に、課題解決を目指して構想をしっかりと描きつつ、農業についてはまったくの未経験の状態から、自ら畑に立って土を耕し、種をまく。そしてその姿を見た周囲の人と話す中で、さらに構想が進化していく。地道でありながらも高速で試行錯誤するこのサイクルが、時間と手間のかかる一次産業の課題解決を後押ししているのだと感じました。

 

かつて野々市では、観光客向けに開発した特産品が、販路を思うように確保できず苦戦したという経験があったそうです。その経験から、桝谷さんは「ただ特産品をつくるだけではだめ。持続可能にするためには、売れるところまで考えて開発することが重要」だと痛感したとのこと。

 

その経験を踏まえ、このプロジェクトでは「特産品づくり」ではなく、「飲食店や地元の人々の暮らしのための野菜づくり」を重視しています。生産された作物は、生産者である飲食店への納品があらかじめ決まっているため、無駄な廃棄を減らすことができるほか、納品先があるという安心感から、品種や栽培方法の工夫といった新たな挑戦もしやすい仕組みになっており、「届け先起点」という逆転の発想が生み出すエコシステムには大きな納得感がありました。

 

「“野々市の野菜”と聞くだけで、料理をつくる人も食べる人も幸福感を抱き、その幸せが連鎖していく。野菜を育てること自体が喜びや誇りになっていて、これこそがシビックプライドなのではと思います」と枡谷さんは語ります。

 

一次産業を飲食店オーナーの視点で捉え直すことで、今まで見えていなかった地域のネットワークや可能性が一気に広がる。一次産業の課題解決の新たな可能性を開拓する、ひとつのモデルケースになるのではないでしょうか。

 


お話を伺った「おまめ舎」代表の久木さんと、野々市市商工会の桝谷さん
    

\久木さんからメッセージ/

農業は、土を耕すことからまちの未来を耕すことにもつながると感じています。 自分たちが食べたい野菜を自分たちで育てる。その小さな一歩が、地域の誇りやつながりを生み出す種になると信じています。

野々市市フードビジネスプロジェクト HP

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