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TOPCIVIC PRIDE ACTION一覧勝手にまち探訪/シオヤプロジェクト

兵庫県神戸市|2018年~

勝手にまち探訪/シオヤプロジェクト

見慣れたまちの面白さを、7時間かけてみんなで見つける、神戸のまち歩きイベント
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■「勝手にまち探訪」は、神戸市垂水(たるみ)区塩屋町を中心に活動するシオヤプロジェクト(以下、シオプロ)が主催するまち歩きイベント。毎回の開催場所はいわゆる観光地ではなく、神戸に昔からある何の変哲もない住宅街。参加者はまちの「案内人」に先導され、住宅街の路地や、坂や川を7時間歩き続けることで、見知ったまちの面白さを再発見できるようになっている。

 

■シオプロ主宰の森本アリさんは、元々は地元塩屋町の魅力を再発見するために、フリーペーパー「レディメイド・シオヤ」の発行や、塩屋在住のアーティストたちと塩屋の絵地図を作成する「塩屋地図プロジェクト」などを通してまち歩き活動を行っていた。

 

■その活動を発展させ、塩屋以外の神戸市内の地域でも「勝手に」まち歩きをしようと始まったのが「勝手にまち探訪」だ。2018年から始まった取り組みは、平日開催かつ7時間という長時間をただ歩き続けるという条件ながらリピーターが後をたたず、取材時点ですでに68回目を数える人気イベントとなっている。

 

 

取材者コメント (編集部 黒田) 

いつのまにか、あなたも「まちの達人」?

みんなで教え合いながら見つける、まちの新たな魅力。

 

「勝手にまち探訪」の特徴は、ガイド役の一方的な説明を聞いて進行するガイドツアーではないという点です。「勝手にまち探訪」のリピーターたちは、既にそれぞれがまちの楽しみ方を知っています。私たちが同行した「灘(なだ)編」では、“神戸市灘区の歴史を自ら調べて冊子にし、地元の図書館に寄贈してしまった人”、“毎朝近くの山に登っている山道に詳しい人”、“神戸の高低差のある地形に魅せられ「神戸高低差学会」という学会を作ってしまった人”など、非常にユニークな“まちの達人”たちが参加していました。

 

7時間のまち歩きの最中も、案内人の話を聞くだけでなく、参加者同士で見つけた面白い標識や建物、風景などを教え合う様子が、そこかしこで見られました。参加者にはその土地の住民の方も多いですが、それぞれの視点でまちの魅力を教え合うことで、自分ひとりでは気づかないようなまちの魅力を発見できる、それが「勝手にまち探訪」の面白さです。

 

「何の変哲もないまちをただ歩いているだけで楽しいなんて、このまち歩きは『発明』だと思いました」。一緒にまち歩きをしたリピーターの女性は、「勝手にまち探訪」をそう表現します。

 

私自身、まち歩きに参加してみて気づいたことがあります。それはまち歩きが終わった時に、自分のまちに対する見方が180度変わってしまったかのような感覚になることです。

 

7時間の中で、先ほどのような“まちの達人”たちと会話をするうちに、自分のまちに対する見方が、非常に一面的なものであったことに気づかされました。何となく通り過ぎようとした高架下が、実は日本初の鉄道トンネルの跡地だということを教えてもらったり、それを受けて地元の参加者の方が、もともとこの地域にある川は川底が周りの地面よりも高い“天井川”だったから、トンネルを作ることになったんだよという歴史を教えてくれたりと、同じ場所でもそれぞれの人の視点で語られることで、どんどんその土地への理解が深まっていきました。

 

7時間のまち歩きが終わる頃には、まちに対する解釈が何層にも重なって、非常に深みのあるまちの見方ができるようになっています。自分自身のまちを見る目がアップデートされた感覚になって、帰宅した後もついつい自分のまちにも面白い場所がないか探してしまいました。外部の人や“まちの達人”たちの視点を借りることが、地域住民のまちへの愛着を育むためには必要なのかもしれません。

 

私たちが参加した灘編は、実は今回で7回目。同じエリアを7回も歩いて、紹介するところが無くなってしまうのではないかと思ってしまいます。でも、その時々の案内人や参加者によってまちの見方はまた変わりますし、一度まち探訪に参加した“アップデートされた目”を持つリピーターの鋭い視点のおかげで、まだまだ新たな発見をし続けられているのでしょう。

 

「何もないまちこそめちゃくちゃ面白い」と森本さんは言います。普段、「自分のまちには何の魅力もない」「まちの風景を特に気にすることなく過ごしている」、そんな人にこそ体験してほしい、自分たちのまちの魅力を再発見できる事例です。

▼今回参加したまち探訪のパンフレット。このパンフレットのデザインもシオプロのデザイナーさんが手がけているとのことです。

 

▼今回の灘編の舞台になった東灘区石屋川駅周辺の風景。地形の高低差が激しく、川底が周りの地面よりも高い“天井川”がよくみられる地域とのことです。

 

▼東灘区が神戸市に合併される前に使われていたレア?な旧御影(みかげ)町のマンホール(左)を発見。隣り合う神戸市のマンホール(右)と見比べることで、まちの歴史を感じられます。

 

▼住宅街にあらわれた小さな図書館。誰でも借りられていつ返してもいい。今回も参加者の方が一冊の本を借りていました。

 

▼大学校内にある進行方向が示された“一方通行”の階段。人の往来が激しいからこそ、それを抑制するために制限がかけられているのでしょうか?それにしてもまちの中の階段で、進む方向まで指定されている階段はなかなか見ない気がします。

 

▼斜面に立つマンションと長い階段。坂が多い神戸市内ならではの風景です。

 

 

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