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TOPCIVIC PRIDE ACTION一覧 “まちなか”障がい者支援/NPO法人「わくわーく」 

福岡県北九州市|2010年~

 “まちなか”障がい者支援/NPO法人「わくわーく」 

障がいをもつ当事者が、もっとまちや地域住民と関われる場所づくり
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■概要:障がい者福祉施設で働いていた5人の支援者たちが立ち上げたNPO法人

北九州市八幡(やはた)と言えば、八幡製鐵所、「青空がほしい運動」で注目を浴びた公害問題、そして近年では公害を克服した「環境先進都市」として知られるまち。これは、地域の婦人会が従来の公害対策に疑問を持ち、先頭に立って始めた市民運動が発端となって生まれた成果だ。
障がい者の就労支援を行うNPO法人「わくわーく」は、従来の支援のあり方に疑問を持った5人の支援者たちが福祉施設を飛び出してつくったもの。その話を聞いた時、思わず、公害問題に立ち上がった婦人会メンバーの姿と重ね合わせてしまった。閉じた施設の中でケアをするのではなく、まちのコミュニティの中に居場所をつくる。ケア&コミュニティを実践する、市民発の障がい者支援の新しいあり方だ。

 


NPO法人「わくわーく」の拠点である多世代交流施設「ココクル平野」。
取材時は平日にも関わらず、施設関係者や地域住民などでにぎわっていた

 

■背景・経緯:“わからないから怖い”という理由で、まちから取り残されないように

「わくわーく」が支援を行っているのは、主に精神に障がいを持つ人々。代表の小橋さんは、NPOを立ち上げた理由の一つに「わからない」が生む隔たりをなくしたかったと語る。精神障がいは、見た目ではわかりにくいからこそ「怖い」という反応が大きい。ある企業で就労作業をした時に、「ハサミが近くに置いてあるけど、大丈夫か」と心配されたりもした。
「どうすれば当事者以外の人々にわかってもらえるのか」と思い悩んだ結果、まちの中に支援施設をつくり、地域の人たちと交流できる開かれた場にすることが必要だ、と考えた。そこでオープンしたのが多世代交流施設「ココクル平野(ひらの)」だ。

 

■実績:KAMIKURUプロジェクトへの参画を通じて感じた手応え

活動の中でも特に注目を集めているのが、使用済みの紙から新たな紙を再生産する古紙のアップサイクルだ。北九州市が産官学民連携で実施している「KAMIKURU(カミクル)プロジェクト」に参画し、企業や学校など様々な団体から古紙を回収、仕分け、新しい紙への再生、再生紙を使った製品もつくっている。例えば北九州市の老舗百貨店井筒屋では、業務で生まれた古紙を再生させ、わくわーく利用者が手作りでつくった手提げ袋や小袋をお客様に提供している。それらの活動が評価され、バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者として、内閣府特命担当大臣表彰優良賞も受賞するなど、活動の手応えも感じている。

 


紙を再生してつくった製品たち。「わくわーく」の名刺も、
もちろんここで再生された紙を使ってつくられている

 

■展望:効果を「手応え」だけで終わらせない~SROIによる可視化にチャレンジ

ココクル平野での地域住民との交流、またKAMIKURUプロジェクトを通じた企業や団体との関わりを通して、障がいを持つ施設利用者に、様々な良い影響が生まれたという。
プロジェクトの一員になることで「自分の役割」ができ、仕事に対するモチベーションが上がり、休まず仕事に来るようになり、体調がよくなって服用する薬の量が減る、という好循環が起こったのだ。
そんな「確かな手応え」を実感しつつ、手応えだけで留めたくはない、と小橋さんは言う。
今、北九州大学の協力も得ながら、SROI(社会的投資収益率。投資がどれだけ社会的価値を生み出したかを測定する指標)を使った「効果の数値化」を目指し、実証を行っている。
効果を可視化することで、企業が参画しやすくなったり、他の活動に転用しやすくなったりなど、今後の広がりを意識したチャレンジだ。

 


再生紙の他に、伐採された竹を使った「竹チェロ」もわくわーくで製作。
近隣の学生たちで結成された「竹チェロユース楽団」もあるそうだ

 

取材者コメント(編集部 山下雅洋)

“たまたま”と“なりゆき”の奥にあるもの

 

今回のインタビュー相手は、アクションを起こした5人の支援者のうちの1人、NPO法人「わくわーく」代表の小橋祐子(こばし・ゆうこ)さん。どんな決意を胸に立ち上げたのか、と尋ねると、「なりゆきなんです。なりゆきで、やってみようか、となって」と軽やかに語ります。さらに話を伺うと、もともと福祉に興味があったわけではなく、たまたま働きやすい場所に福祉施設があり、時間の自由もきくので支援者として勤務したのがきっかけだそう。

そこで働くうちに、様々な誤解や偏見に出会い、それを変えようにも施設という閉じた場所での変革には限りがあることに気づいた小橋さん。当時働いていた仲間たちに「それっておかしいよね」と日々話す中で、自然とNPO法人の設立に至ったそうです。

そんな“なりゆき”から生まれた「わくわーく」は、2025年で設立15年を迎えました。

ここまで長期間続けられた秘訣を聞くと、小橋さんは「秘訣もなにも、たまたまですよ。運よくご縁がつながって」と恥ずかしそうに手を振ります。

 


回取材にご協力いただいた、NPO法人「わくわーく」代表、小橋祐子さん

 

小橋さんの話には「たまたま」「なりゆき」という言葉がよく出てきます。

しかし、話を聞いてみると、「幸運とは、準備が機会に出会うことだ」という格言を地で行くように、多くの人に会い、色んな場所に足を運び、意気投合すればすぐ行動に移す、という活動量の多さが「たまたま」の奥にあることがわかります。

「なりゆき」も、言い換えれば「まず軽やかに第一歩を踏み出す」ということ。

わたしたちは、社会課題解決という大きなゴールを見据える時、その途方もなさについ立ち止まってしまうことがあります。そんな時、先のことを考えすぎず、「なりゆき」に任せて、まず目の前の疑問に向き合う。そんな姿勢の大事さを改めて感じました。

冒頭でも触れましたが、北九州市八幡は、地域の婦人会が立ち上がり、公害問題解決の市民運動をリードして現在の環境先進都市をつくりあげたまちです。シビックプライドの根幹は、市民が主体的にまちを良くしようとアクションを起こすこと。そういう意味では、この北九州市は歴史的にシビックプライドが根付いているまちかもしれません。(なんと「シビックプライド」について、小学校でも教えているそうです)

小橋さんたちが「なりゆき」で始めた“まちなかでの障がい者支援”。

それが、シビックプライドが根付く地域で育ち、これから「効果の数値化」という武器も身に着けようとしています。そんな「わくわーく」の活動が、北九州市を、「環境先進都市」に加え「ケア先進都市」にする日も、そう遠くないかもしれません。

    

\小橋さんからメッセージ/

まちの中で出会い、つながり、自然に生まれる“なりゆき”が、私たちの活動を育ててくれました。 地域の方々と一緒に歩むことで、利用者さんの変化や新しい可能性が生まれています。 これからも、誰もが安心して関われるやさしい地域を、みなさんと一緒につくっていけたら嬉しいです。

▶NPO法人わくわーく:https://wakuwa-ku.com/

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