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山梨県富士吉田市|2010年〜

うどん部/山梨県立ひばりが丘高等学校

地元高校生が挑む!自分たちの手で、郷土料理「吉田のうどん」を次の世代へ
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■概要:地元高校生の“うどん部”が受け継ぐ地域の味

山梨県立ひばりが丘高等学校の「うどん部」は2014年に発足し、富士吉田の郷土料理「吉田のうどん」を広めるために活動中。市内のスーパー「セルバ本店」(同市に本社を置くスーパーマーケットチェーン)のフードコートに店舗を構え、毎週日曜日にうどんを販売するほか、企業とのコラボ商品開発やイベント出店など、取り組みは多岐にわたる。部員は販売計画の立案から仕入れ、うどん打ちや調理、接客までを一貫して担い、富士吉田の食文化を受け継ぎながら企画力や実践力を磨いている。

 


そびえ立つ富士山を背景に、うどん部がこだわって制作したのぼりがなびく

 

■背景・課題:授業を通じて目の当たりにした、吉田のうどん文化の深刻な担い手不足

うどん部の活動は2010年、同校の情報経理課の授業で行われた地域に関する課題研究で、吉田のうどん店の情報をまとめるホームページを制作したことが始まりだった。その活動が授業の枠を超えるようになり、やがて部活動へと発展。そしてうどん店の取材を進めるなかで、その多くが後継者不足に直面している現実を知り、「自分たちが吉田のうどんを伝えていこう」との思いで、2018年から高校生自ら店舗を運営するようになった。

 

■実績:累計38万部のフリーペーパー発刊に商品開発――広がり続ける活躍の場

スーパーの一角にあるうどん部の店舗には、地元の常連客や観光客が多く訪れ、1日平均80食を販売する。また、2年に1度発行しているフリーペーパー「Udon navi」は、市内すべてのうどん店を取材。店舗ごとに「硬さ・太さ・つゆ」を分析し、オリジナルのコメントも添えるなど独自の視点が好評を呼び、これまで10号分の累計部数は約38万部にのぼる。さらに、大手コンビニエンスストアと共同で商品を開発したり、全国紙主催「第7回地域再生大賞」で関東・甲信越ブロック賞を受賞したりと、活動は外部からも高く評価されている。

 


「Udon navi」の掲載店は100軒にのぼり、吉田のうどんを提供する山梨県外の店舗も掲載されている

 


記事の執筆やデザインも全てうどん部の部員らが行う

 

■展望:夢は“いつか讃岐うどんを超える”こと

部員たちの目標は、「いつか讃岐うどんを超える」こと。吉田のうどんを讃岐うどんに匹敵する全国ブランドへ育て、地域の“アイデンティティ”ともいえる味を未来へと残すべく、活動を柔軟に広げている。減塩レシピなど健康志向の新たな商品開発にも挑み、より幅広い層へのアプローチを目指しながら、SNSやフリーペーパーを通じた情報発信にも力を注ぐ。

 


生地に一味などを混ぜたMAGUMAうどん(ピリ辛麺)など、複数のうどんメニューを提供する

 

取材者コメント (編集部 八木)

授業から始まった小さな一歩が、地域の食文化を継承する確かな力にーーここにしかない“うどん部”の活動

 

9月上旬、うどん部が出店する「セルバ本店」内のフードコートを訪れると、11時の開店前にもかかわらず、すでに列ができていました。先頭に並んでいたお客さんが「ここのうどんは美味しいよ」と声をかけてくれ、その人気ぶりが伝わってきます。

 

初めて食べた吉田のうどんは、「すする」というより「ほおばる」「噛みしめる」という言葉がしっくりくるほどのコシの強い太麺。噛むほどに小麦の風味が口いっぱいに広がり、うどん部特製すりだねを加えると、スパイシーな味変まで楽しめる一杯でした。

 

今回話を伺ったのは、副部長の天野さんと顧問の広瀬先生。調理師を志して入部した天野さんは、部活を通じて初めて吉田のうどんの歴史を知ったそう。織物業が盛んだった時代、織り手であった女性の手を止めぬようにと男性がうどんを打って昼食にしたことが始まりとされ、男性がこねたり、踏んだりしてつくったため、噛み応えがある太い麺になったと言います。天野さんが「吉田のうどんは生活の一部として育まれてきたもの」という背景に触れつつ、こうした歴史を自分の言葉でさっと説明する姿は、部活動を通じて地域の文化を自分の中に確かに取り込んでいる証のように映りました。

 

朝練ならぬ“朝仕込み”に励んだり、営業中には先輩が後輩に指導する姿があったり、部活動ならではの熱気と青春の爽やかさがあふれる光景。一方で、店舗運営や商品開発といった実践は、将来につながる学びにもなっていて、フリーペーパーの制作をきっかけにデザイナーを志したり、卒業後にうどん店の開業を目指したりした部員もいたそうです。

 

うどん店を出店したり、企業と商品開発したり——一見すると「高校生がそんなことまで?」と驚く活動と実績を持つうどん部ですが、出発点は、ほかの学校でも行われている地域学習。普通なら“授業”という点でとどまることが多い中、ホームページを作り、部活動を立ち上げ、自らうどん店を営むなど、持続的に活動を積み重ねてきたことで大きな活動になりました。授業という一過性の学びを、自分たちの手で“続く文化”へと代々育ててきたこと——これこそが、このうどん部の何よりのすごさだと思います。

    

\うどん部 副部長の天野さんからのメッセージ/

私たちは全国の多くの方々に吉田のうどんの魅力と美味しさを知ってもらいたいと思い、活動を続けています。専門フリーペーパー「Udon navi」やSNSで最新の情報を発信していますので、ぜひのぞいていただけたら嬉しいです。

うどん部X

山梨県立ひばりが高等学校HP

うどんなびVol.12(現在最新版)

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