■「ONE PARK FESTIVAL(ワンパークフェスティバル)」はJR福井駅から徒歩5分ほど、福井市の中心市街地にある福井市中央公園で年1回開催される音楽フェスティバル(取材は第5回開催時)。
■「街全体が一つのテーマパークになる音楽フェスティバル」というコンセプトの通り、アーティストのライブを楽しむ合間に街中でショッピングをしたり、フェスで盛り上がって汗をかいたら市内の飲食店やホテルで涼んだりと、イベント会場と街中を自由に・気軽に行き来することができる。
■このフェスの特徴は、地元の食材を使ったフェス飯に加え、地元の工芸品を扱うショップも出店していること。福井の繊維加工技術で作られたバッグや鯖江(さばえ)市の眼鏡など、アーティストのライブを聴きながら、福井の食と手仕事を同じ空間で体感できる。
■運営しているのは、株式会社オールコネクト(福井県に本社を置くインターネット取次事業会社)の連結子会社であるオウデム株式会社。運営主幹企業でありながら、イベント会場内では株式会社オールコネクト、オウデム株式会社のPRを一切行わないことを明言している。またONE PARK FESTIVAL以降、親会社であるオールコネクトはプロバスケットボールチームの発足やアリーナプロジェクトなど多岐に渡ったプロジェクトに参画しており、福井の地域活性化のきっかけにもなっている。
取材者コメント (編集部 八木)
「福井が熱い!」音楽だけじゃない、福井の魅力をエンターテインメントとして届けるフェス
「あ~、福井のことたくさん知っちゃった!」ONE PARK FESTIVALからの帰り道、思わずそんな言葉が出てきたのは、音楽と同じくらい福井の食と工芸品を楽しみ、福井の人とふれあい、福井にどっぷり浸かることができたからだと思います。
コンセプトからもわかるように、このフェスの一番の魅力は音楽を楽しみながら、食や工芸品、人を通じて福井のまちを体感できることです。
フェスの発起人は、福井出身であるオウデム株式会社の勝田さん。会社員とDJの2つの顔を持つ勝田さんが、DJ仲間と話していた「この公園(福井市中央公園)でフェスができたら気持ちいいだろうね」という会話が、フェスをつくるきっかけでした。そこから、思いに共感する仲間とともにプロジェクトがスタート(2017年)。勝田さんは、ずっと福井で育ってきたからこそ見える地域課題を「大好きな音楽を切り口に解決していきたい」と強く思い、その熱い気持ちを企画にして、仲間たちと自治体に向けて何度も提案を続けたそうです。その熱い思いに応えた自治体との一体感が、この「まちとひとつになったフェス」を支えているのです。
そんな勝田さんと自治体の一体感を実感したのは、フェス当日でした。屋内会場に入ると、DJブースやミラーボールなどまるでクラブのような空間が広がっていたのですが、驚くことにその場所は、普段は県職員が使用している県庁の施設だったのです……!自治体も一緒になってこのフェスを盛り上げていることが伝わってきました。
また、会場に出店するフェス飯や工芸品も、音楽ライブと同じくこのフェスの主役。だからこそ出店内容のクリエイティブチェックを欠かさないと勝田さんは語ります。「福井の食や工芸品を、音楽ライブと同じエンターテインメントとして見てほしい」。そんな勝田さんの熱意は、出店者にも伝播しています。実際当日は出店者一人ひとりが「福井にはこんな商品があるんですよ」「実は福井ってこの技術力が高くすごいんです!」と商品に詰まっている福井の魅力を余すことなく熱弁していました。
もしフェスの売上だけを追求すれば、ナショナルブランドや全国チェーンの店が出店することも考えられるでしょう。しかし、地元の飲食店を中心に、地元の食材が必ずラインナップされている店舗で提供されるサービスを通じて来場者の笑顔が広がる様子は、地元の人々にとって「自分の住むまち(福井)は訪れた人をこんなにもおもてなしできるんだ!」と実感できる場になっています。フェス後には、SNSでONE PARK FESTIVALの感想と共に「#どうした福井」と市民発でハッシュタグが広がったり、「福井に何もないって言う人もいるけど、このフェスで福井の一体感を感じてもらえると嬉しい」とフェスを応援するメッセージが公式SNSに届いたりしたそうです。
第1回の開催以降、ONE PARK FESTIVALを知った他自治体からも問い合わせが多く、2024年には福井での運営方法を応用・展開し、岐阜でも開催されました(「ONE PARK RIVERFES in MINOKAMO(美濃加茂)」)。美濃加茂のフェス運営を担当した竹内さんは、運営にあたって美濃加茂版の実施マニュアルを作成しつつも、完璧なマニュアルではなくあえて余白を作ることを意識していたと言います。新たな地でフェスを成功させることはもちろんですが、大事なのは地域ごとのオリジナリティを反映し、その地域のディレクターが主体的に動けるチームを形成することで、地元にノウハウを残していくこと。この成果が他自治体にも注目され、ONE PARK FESTIVALが一つのモデルケースとなっていることがうかがえます。
こうした取り組みの原点は福井で生まれたONE PARK FESTIVAL。フェスをつくる人も、訪れる人も「なんかすごいぞ福井……!」と、思わず福井を語りたくなるような熱気あふれる場がここにありました。
▼オウデム株式会社 勝田さん(右)、竹内さん(左)
▼福井駅から徒歩5分、市街地の中心にある「福井市中央公園」がフェスのメイン会場
▼ライブステージから後ろに振り返ると福井県の工芸品を扱うショップがずらり!商品を見たり、試したり、地元店員さんの「福井って実はこの技術がすごいんです……!」話が聞けるのが楽しい
▼フェス飯の飲食後の紙皿は、直接お店のスタッフに返却するルールで、来場者からの「ごちそうさまでした!」「おいしかったです!」の言葉から、出店者と来場者のコミュニケーションが自然と生まれていた
▼このDJブースはなんと県庁の施設!地域全体でイベントを盛り上げていた
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