\地域共生部シニアディレクター 白石将さんからのメッセージ/
地域との関わり方に、最初から正解があるわけではありません。だからこそ、大切なのは、どんなに小さなことでも、まず行動に移してみること。実際に動くことで、思いもよらない出会いやアイデアが生まれ、そこから新たな可能性が広がっていきます。JINS PARKも、そんな一歩を踏み出すきっかけとして、気軽に利用していただけたら嬉しいです!
▶JINS前橋店 店舗情報HP:https://store-jp.jins.com/b/jins/info/20005/
▶JINS PARK 公式Instagram:https://www.instagram.com/jinspark_maebashi/
アイウエア ブランドがひらく「まちの拠点」から生まれる、地域経済の発展と自社の持続的な成長
■概要:一企業が作ったまちの拠点が、地域のハブとなり循環の起点に
「JINS PARK」は、大手アイウエアブランドJINSが2021年、創業の地である群馬県前橋市に開業した複合施設。
1階にはベーカリーカフェとJINS前橋店が設置され、2階へと放射状に広がる階段はそれ自体がベンチとなり、ところどころに絵本が置かれている。2階には座席スペースと自由に遊べる屋外広場が設けられ、芝生スペースも含めて全体が公園のようにひらかれた、地域住民が日常的に訪れる場となっている。
館内には多目的トイレや授乳室など、近隣の商店や施設ではあまり見られない設備も備え、多様な人の使いやすさに配慮。
施設の運営は、開業と同年に新設された同社の地域共生事業部が担当し、店舗運営のほか、地域住民や企業が主催するマルシェやワークショップ、イベントなど、年間120本以上の企画実施をサポート。また企業やクリエイター、住民の交流拠点としても活用できるようにしている。
JINSは、地域全体の活性化が長期的に自社の売上げにも還ってくるという考えのもと、イベント開催時には広場を無料で貸し出すほか、備品も自由に利用できるようにしている。
階段は座席にもなりパンとコーヒーを手に自由にくつろぐ事ができる。
JINS前橋店には、視力測定スペースや加工スペース、受け渡しカウンターなどがコンパクトにまとめられている。
■背景・経緯:地方店舗のマーケティング課題と地域課題を結ぶ、日常的な関係を築く場づくり
JINS PARKの構想は、既存店舗の建て替えを検討していた2017年頃に始まった。当時、メガネは2.5年に一度の買い替え商品で、その間は顧客との接点が生まれにくいという課題があった。しかしその課題に対して、一般的なマーケティング手法は「CMを常に流し続け、ブランドを忘却させないようにする」というもの。
対してJINSは、日常的に訪れる理由となる場を設け、地域との接点を増やせば、買い替えタイミングで最初に思い出されるブランドになれるのではという仮説を立て、建て替え計画の検討を重ねた。
さらに、JINSの創業の地である群馬・前橋は、中心市街地の活気が年々失われ、2010年代には県庁所在地の中でも地価が最も低い水準にあった。JINS創業者・田中仁会長は、企業活動と地域の課題を結びつけ、前橋全体の活性化を図る新たな拠点をつくれないか考えていた。
こうして、JINS PARKは「新たな地方店舗マーケティングの試み」、また「企業が事業として地域課題に取り組む試み」として、2021年に開業。そしてこの場所から地域との関係づくりを進めるため、「地域共生事業部」が設立された。
JINS創業者の田中仁会長が前橋の商店街の活性化のために、個人の財団法人で手掛けた 白井屋ホテル。創業300年の旅館をリノベーションして再生させ、民間主導のまちづくり「前橋モデル」のきっかけとなった。前橋市の中心部に位置する「ばばっかわスクエア」のとなりに並んでいる。
■実績:まちとの関係性が、本業に貢献する事業資産に
JINS PARKには、近郊に住む家族連れやビジネスパーソン、年配の方など多様な人々が訪れ、他のJINS店舗にはない幅広い集客が実現している。ベーカリーカフェを日常的に利用したり、イベントに参加したりする人が増えるとともに来店者数も増加。
カフェ事業単体でも黒字化し、販促費のかからない(むしろ利益を生む)日常の集客装置となった。建て替えにあたってメガネ売り場面積を3分の1に縮小したにもかかわらず、以前よりも売上が伸長するなど、地域との関係づくりが店舗の営業面にも好影響をもたらし始めている。
そしてその好影響は前橋店だけにとどまらない。JINS社内の新商品開発の一環で、子どもの頭部データが収集できないか相談があった時にも、イベントの場を活用し、子どもの頭部測定データの収集を実現。地域との関係性が会社に新たな事業価値をもたらす事例も生まれている。さらに、リクルーティング面でも群馬県内では新卒採用における志望者が大幅に増加するなど、社会課題に敏感な若者がJINSに関心を持つきっかけにもなっている。
約520坪の広大な敷地には、芝生の広場や駐車場もあり、ほぼ毎週末に、マルシェやワークショップ、子ども向けの教育イベントなどが開催されている。
■展望:「前橋モデル」を、他の地域でも成功させることが「企業が担う公共」のすそ野を広げる
JINS PARKの活動によって、イベントで出店経験を積んだ個人や企業が、前橋駅前など別の場所でも活動を始めるなど、まちの中に新たな動きが広がりつつある。こうした実績を踏まえ、今後は創業の地である前橋で蓄積した経験をもとに、別の地域での拠点づくりも見据える。地域全体の活性化が自社にも還ってくるという「前橋モデル」を、他の地域でも成立させる再現性を高めることが、「企業が担う公共」が他企業に広がっていく上での鍵になると捉えている。
クラウドファンディングで募った資金を運営費に充て、JINSが県内の公園で主催した「焼きまんじゅうフェス」(焼きまんじゅうは地元の名物)。飲食事業者がこうしたイベントを主催する場合は競合関係から出店者が集まりにくいケースもあるが、第三者であるJINSが運営を担うことで、協力企業や出店者が広がったという。
地域の子どもに対して「大人になっても地元で暮らし続けたい」と思える体験を提供することを目指し、夏休みには地域企業とともに「群馬ビジネスキッズチャレンジ」を実施している。
取材者コメント(西村・西牟田)
新規事業での取り組みを、「実験」と「収益」に分けて考える
実は私も企業の社員という立場で、公共の公園を民間が開発・運営する事業(Park-PFI事業)に携わっています。JINS PARKの事例は、「企業の中で新規事業を行っていること」「民間と公共が交わる場の運営事業を実施していること」など、業務との共通点がとても多く、自身が直面している課題や悩みを織り交ぜながら質問を重ねていったインタビューでした。
今回のインタビューを受けてくださった地域共生事業部シニアディレクターの白石将さんは、これまでアメリカ進出準備や台湾進出を現地責任者として担当するなど、数々の新規事業を立ち上げてきた方。JINS PARKもまた、企業が地域の課題にどのように向き合うかを模索する、大きな挑戦の一つです。
話を伺う中で印象的だったのは、新規事業などの新たな施策を進める際に、それを「実験として行うのか」「収益のために行うのか」を明確に整理している点でした。実験として位置づける場合は、その目的や取得すべきデータを明確にし、社内の理解を得ながら進めていく。この区分があることで、取り組みの意図や社内説明の精度が大きく変わるのだと感じました。
JINS PARKでは、地域住民はもとより、地元企業や自治体、医療機関などから、イベント企画や連携に関する相談が増えているといいます。人とつながり、何かを実現しようとしても、そのための「場」がなければ始まりません。JINS PARKはまさに、その起点となる場として機能しています。だからこそ情報が集まり、新たな取り組みが次々と生まれて続けています。
この日も「自分でイベントを企画するのは初めて」という女性が来店されていて、JINSのスタッフが丁寧に応対していました。白石さん曰く「経験の少ない方には、どうやったら人が集まるかなどの集客アイデアや、マッチングの相性が良さそうな別の方をご紹介して、一緒に企画を実施することなどを提案しています」とのこと。場として機能している理由は、ただ場があるからだけではないのだということもよくわかりました。
「まちの拠点」に人が集まり、関係が生まれ、その関係がまた新たな動きを生みだしていく。JINS PARKは、そうした循環の起点となる場所であると実感しました。
まちインサイト5指標で見ると...
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●市民が自分たちで企画したイベントをJINS PARKで実施できる
●イベントを実施したい市民をJINSの地域共生部がサポート。持っている地域ネットワークを提供し、 足りない部分を補えるスキルを持つ別の市民との繋がりを作る。 -
●毎週末JINSおよび市民主催のイベントが行われ、新しい体験ができる
