\名古屋市 名駅ターミナル整備課 伊藤太一さん、山中陽子さんからメッセージ/
私たち名駅ターミナル整備課は、駅前広場の整備等を促進するために、2022年度から設けられた部署です。「名古屋といえば名古屋城」というイメージが強いですが、それに並ぶようなシンボリックな空間へと、桜通を変えていきたいと考えています。その通り沿いのワーカーの皆さんに、「この場所で働いていることが誇りだ」と思っていただけるよう、ともに検討を重ねていきます。社会実験は今後も実施しながら、将来の桜通を考えていきたいと思っていますので、皆さんも機会があれば訪れてみてください。
▶名古屋駅前の桜通で社会実験「NAGOYA Challenges!WAY in桜通」を実施します:https://www.city.nagoya.jp/kurashi/douro/1014770/1041461.html
▶X 名古屋市リニア課:https://x.com/758shi_linearka
▶リニア中央新幹線の開業に向けた都心まちづくりについて:https://www.city.nagoya.jp/shisei/keikaku/1009818/1009848/1034199.html
■概要:クルマからヒトを中心とし、名古屋の「顔」となる通りへ
「NAGOYA Challenges! WAY in 桜通」は、名古屋市の主催で2025年11月、1週間にわたって行われた社会実験だ。舞台となった桜通は、名古屋駅前のロータリーから栄方面をつなぐ6車線の幹線道路。名古屋市では、2030年代後半までを目標に駅前広場の再整備を行っていく中で、駅前広場からまちへ繋がる桜通をクルマ中心からヒト中心の道路空間へと転換することを目指している。そのための初の社会実験となった「NAGOYA Challenges! WAY」では、ベンチや屋外家具、芝生、キッチンカーなど、人々の滞留や交流を促す仕掛けを用意。市民や来街者がどのような都市空間を求めているのかを検証した。なお、本実証実験の企画・運営は読売広告社チームが担い、来街者の滞留や交流を促す体験設計を通じて、空間の可能性を引き出した。今回の結果を踏まえて、継続的に社会実験を重ねながら、名古屋の「顔」として、多くの市民が誇れる空間づくりを図っていく。

実験期間中は、桜通の歩行者空間がいつもとは違う「居場所」になった

会場には異なる機能を持った3つのゾーンを設定した
■背景・経緯:リニア中央新幹線の開通を見据えた駅前空間の見直し
名古屋駅は9つの鉄道路線が乗り入れ、1日約130万人が利用する中部圏の玄関口。駅から続く地下街は非常に充実し、人の流れが形成されているが、初めて訪れた人にとっては、目的地への向かい方が分かりにくいなどの課題があった。その一方で、地上の駅前空間は大きなロータリーが広がるなど、戦後につくられた車中心の構造のまま。ロータリーから伸びる桜通も、オフィスビルなどが並ぶメインストリートでありながら、人の往来は多くなかった。そうした中、品川~名古屋を結ぶ、リニア中央新幹線の整備が決定。開業が予定される2027年度以降、さらに多くの人々が名古屋を訪れることが期待されることから、名古屋の新たなシンボルとして親しまれ、活用される駅前空間への再整備が構想された。名古屋市は、2014年に「名古屋駅周辺まちづくり構想」を策定した上で、名古屋駅周辺交通基盤整備方針、東側駅前広場デザイン計画等を策定。桜通については、名駅地区の企業などでつくる名古屋駅地区街づくり協議会において、名古屋市も参加しながら、2024年度から、通りのあり方について検討が進められていった。

現在、駅から桜通、繁華街までの人の流れは、ロータリーを挟み分断されている。道路空間再整備では、桜通は車線を減らし歩道など人のための空間を拡大する。ロータリーは広場空間として、駅からの見通しと導線を確保する
■実績:課題の抽出とともに、再整備を広く周知
桜通の今後に関し、名古屋市が目指すこととしたのは、名古屋のみならず中部圏の玄関口にふさわしい品格が感じられる、洗練された通り。また、イベントや店舗などで、ただ単に「多くの人を集める」のではなく、日常的に人々が憩えるような余白を持った空間だ。「NAGOYA Challenges! WAY」は、そのイメージを具体的なデザイン・機能に落とし込んでいく上での知見の収集を目的に実施。幅広い年齢層が足を止めて滞留する姿が見られ、「通過するだけではなく、集まったり過ごしたりする場として良い」「通りの雰囲気が柔らかく感じた」など、アンケート調査でもポジティブな声が多くを占めた。また、明るさや気温など夜間の環境条件、道幅などの空間条件によって、人々の滞留行動に差があったことなどの課題も把握。さらに名古屋市としては、開催までの官民の協働プロセスや、イベントの広報効果によって、市民との間に「名古屋駅周辺が変わっていく」ことへの認識や期待が広がったことを、「NAGOYA Challenges! WAY」における最大の収穫と見ている。

イベント開催の告知で用いられたロゴとコピー。その中でも「大きく変わろうとしている」ことを打ち出している

ベンチなどの設備と音楽ライブをはじめとする催しによる、滞留への効果を検証。今後もソフト・ハードの両面から検証を続けていく
■展望:桜通の道路空間再整備に向け、変化の過程を共有していく
桜通は、その直下に地下街があり、地上と地下とでいかに役割を分担するのか、車線が減少した分の余剰空間に、歩道や自転車走行空間、滞留空間など人のための機能を、どのように振り分けていくのか。名古屋市はこうしたポイントを、継続的に社会実験を重ねながら検討していく。その中で重視するのは、まちが変わっていこうとするプロセスに、市民を巻き込んでいくこと。今回の実証実験で主に名古屋市と連携したのは、街づくり協議会や桜通に面して立地する企業だったが、さらに広い範囲の企業との協働を図っていく。まちのシンボルとして広く認知され、多くの人が利用する空間は、その場所自体が市民の誇りの一つとなり得る。それを形づくっていく過程を、官民がともに体験することもまた、駅前広場や桜通の再整備、さらにその後に向けた、長期的なシビックプライドの醸成につなげる考えだ。

仕掛けによってまちが変化することを「使いながら」体験する市民たち。一人ひとりの関わりが、これからのまちのあり方と誇りを育んでいく
取材者コメント(編集部 祖父江)
対話と体験の積み重ねが、シンボルの価値を高める
シビックプライドの醸成には、市民一人ひとりが当事者としてまちに関わることが重要です。
しかし、ハード整備においては、行政が一定の方針を示し、市民から意見を募る形が一般的であり、どうしても関わる人が一部に限られてしまうのではないかという課題を感じていました。
一方、今回取材で訪れた名古屋では、リニア中央新幹線の整備構想が持ち上がってから、市民自らが「駅前空間の充実を」と積極的に声を上げてきたといいます。実際に、これまでの駅前再整備に関する検討は、官民の間で多くの議論が重ねられてきました。
そうした流れの中で行われたのが、実証実験としての「NAGOYA Challenges! WAY」。私も企画・運営として関わる中で感じたのは、社会実験を通して「体験」を届ける意義でした。
インタビューさせていただいた名古屋市住宅都市局都心まちづくり部名駅ターミナル整備課課長補佐の伊藤太一さん、同課主任の山中陽子さんは、「データ取得や声の収集に加え、関係者とともに桜通の将来を考える機運を生み出す。社会実験の意義として、そのプロセスを可視化することで、リニア開業に向けたまちの変化への期待感を高めていくことが重要です。」と語っていました。

桜通について、現地で説明してくださった伊藤さん(左)と山中さん(右)
これを、シビックプライドの視点で言い換えるならば、楽しい体験を通して、多くの人にまちが変わるプロセスに関わる「当事者」となってもらう、ということなのだと思います。
単に、完成した空間を提供されるだけでは得られない愛着も、こうした機会を重ねることで育まれる。また、将来のまちのビジョンを共有する人が増えるほどに、より多くの市民が望むハードづくりに繋がります。
駅前空間の整備完了は2030年代後半の目標と、まだ少し先のこと。桜通の空間づくりの議論は、スタートしたばかりです。
しかし、整備が本格化する前のこの段階こそが、多くの市民が愛するシンボルをつくっていく上で重要なタイミングなのだと感じました。
まちインサイト5指標で見ると...
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市民自身が、まちが変わっていくプロセスに自分ごととして関与することで、自分たちが「これからの名古屋のつくり手である」という意識を高めることができる -
市民がまちにどんな体験を求めているかを、継続的な社会実験によって把握しながらまちをつくっていく、開かれた姿勢を感じることができる
