1977年の創刊以来、いつの時代も若い女性の心をつかみ、愛され続けてきたファッション誌『MORE』。この度、『CIVIC PRIDE®ポータル』編集部は、集英社『MORE』と共同で、20~30代女性たちの等身大の視点で考える、「わたしたち」の地方創生PROJECTを始動。そのスタートとして、20~30代女性の「二拠点生活」に対する意識調査を実施した。
地方創生というテーマにおいて、“人口流出”や“消滅可能性都市”といった文脈の中で語られがちな若い女性たち。彼女たちの視点で捉え直すことで見えてくる新たな可能性とは?
今回は、協働の背景や調査結果の所感、今後の展望について、『MORE』ブランド統括/『MORE WEB』編集長 中田貴子さんと、『CIVIC PRIDE®ポータルサイト』編集長 小関美南が語り合う。(以下、文中敬称略)
特設ページはこちら→ 「わたしたち」の地方創生PROJECT
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中田 貴子(なかだ たかこ)さんMOREブランド統括/MORE編集長(WEB) MORE JAPAN地方創生チーム統括集英社に入社後、『non-no』『BAILA』『éclat』といった20~50代女性向けメディアの編集部にてファッションページを担当。2020年『MORE』本誌編集長、2022年『MORE WEB』編集長、2023年6月より現職。日本各地のお出かけ情報を発信する人気コンテンツ『MORE JAPAN』の運営にも力を入れている。
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小関 美南(こせき みなみ)CIVIC PRIDE®ポータルサイト編集長読売広告社に入社後、さまざまなカテゴリのコミュニケーション設計や新商品開発に携わったのち、都市生活研究所に所属。2023年の『CIVIC PRIDE®ポータルサイト』立ち上げ以来、編集長として、シビックプライドに関連する全国各地の取り組み取材・発信。CIVIC PRIDE ACTIONの企画~実施も手掛ける。
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『MORE』が地方創生に取り組むワケ
─はじめに、ファッション誌である『MORE』が二拠点生活というテーマに取り組むことになった経緯を教えてください。
中田:取り組みの背景には地方創生を盛り上げたいという『MORE』編集部の想いがあり、そのはじまりはコロナ禍の頃にさかのぼります。日本全体が活気を失いかけていたとき、媒体として何かできることはないだろうかとの話が持ち上がり、着目したのが
・全国誌であり、日本各地に読者がいる
・読者のブロガー集団である「MOREインフルエンサーズ」を抱えている
という『MORE』のアドバンテージでした。
これら2つの強みを生かし、日本が元気になる活動をしようということで2021年にスタートしたのが『MORE JAPAN』プロジェクト。翌22年には『MORE JAPAN』と冠したWEBコンテンツをつくり、各地にいるMOREインフルエンサーの20~30代女性に、彼女たちが暮らす地域の情報を発信してもらうようになりました。

─『MORE JAPAN』の反響はいかがでしたか?
中田:おかげさまで大変好評で、「知らなかった地方の情報に出合えた」と、うれしいご意見をいただいたりもしました。また、ちょうどその頃、地方自治体の方とお会いした際に「若い女性にアプローチしたいけれど方法がわからない」というお話を伺って……。「長年、若い女性と向き合ってきた『MORE』だからこそ、お役に立てることがあるのでは」との思いが強まりました。
二拠点生活に着目したのは、そうした活動を行う中でのことです。MOREインフルエンサーズには二拠点生活をしている20~30代女性がけっこういると気づき、潮流はもう始まっていると感じたんです。観光よりも深いつながりをつくることができて、移住よりもライトに取り組めるところが、自治体のお悩みの解決につながるのではないかと考え、深掘りしてみたいと思いました。
「若年女性へのアプローチ」視点×「シビックプライド」視点の新タッグ
─『MORE』が、『CIVIC PRIDE®ポータルサイト』とタッグを組むことになった経緯を教えてください。
中田:まずは二拠点生活の知見を深める必要があると思いました。ですが、残念ながら私たちは、本格的な調査のプロではありません。どうしたものかと思っていたとき、当社のメンバーを通じて『CIVIC PRIDE®ポータルサイト』編集長の小関さんにお会いする機会を得たんです。地方創生についてリサーチする中で読売広告社さんのシビックプライドの取り組みはよく見聞きしていたので、とても心強く思いました。
小関:初めてお会いしたのは半年くらい前でしたよね。
中田:ええ。実際にご相談したら、何年もシビックプライドをテーマにした活動を続けている小関さんたちはやっぱりリサーチのプロなんです。いただく提案やアドバイスは学びと発見の連続で、本当にありがたかったです。

─『MORE』からお話をいただいたとき、小関さんはどう思われましたか?
小関:私自身、ファッション誌としての『MORE』の読者だったので、最初は「なぜMOREが地方創生?」と意外に思う気持ちもありました。でも振り返ってみると、『MORE』は難しいことも等身大の言葉でわかりやすく伝えてくれる媒体だったな、と思ったんです。
私たちの運営している『CIVIC PRIDE®ポータルサイト』は、シビックプライドという難しい概念を“親しみやすく、かわいく、軽やかに”発信することでサイトに来てくれた人の元気が湧いて新たな一歩を踏み出せることを目指しています。
そういう意味でも、魅力的な情報発信で若い女性たちの背中を押し、地域を元気にしている『MORE』との共通点を感じるところもあり、一緒に取り組めば今までにないアウトプットができるのではないかと思えて、わくわくしましたね。

二拠点生活って、意外と簡単
─協働で取り組む企画の第一弾は、20~30代女性の二拠点生活に関する意識調査でした。
小関:はい。地方自治体の大きな課題といえば、やはり人口減少・人口流出です。中田さんが着目なさっていた二拠点生活は、交流人口ないしは関係人口の創出につながる重要テーマということで意見が一致し、調査に至りました。
─それまで、20~30代女性のシビックプライドについてはどのように感じていらっしゃいましたか?
中田:『MORE JAPAN』は、全国のMOREインフルエンサーズによるご当地情報でとても盛り上がっています。彼女たちの中には確実に地元愛があって、無意識のうちにシビックプライドを持っているんじゃないかと思っていました。
小関:私たちが2年に1度実施している「シビックプライド調査」の結果からは、彼女たちは関わるまちに対して、単なる利便性以上に居心地の良さや文化的な魅力を求めている傾向が見えました。ほかのセグメントにはない傾向だったので、ますます「これは深掘りのしがいがありそう……!」とチームで盛り上がりましたね。

─実際に意識調査をしてみて、いかがでしたか?
中田:率直な感想は、「二拠点生活というものを、もっと軽やかに考えていいのかも?」です。エッジの効いたこだわりや強いナチュラル志向を持っている人ではなく、いわゆる「普通の女の子」がライトに二拠点生活を始めている実態が見えてきたんです。経験者のほとんどはあまり重たく考えず、気楽にスタートしていることがわかり、これまでとは違うアプローチの仕方があるし、ターゲット層も広がりそうだという期待を持ちました。
小関:二拠点生活というと「自然の中で癒されたい」というイメージを感じることが多いですが、彼女たちが二拠点生活に求めていることを言語化すると、「もっと刺激が欲しい」「もっと楽しみたい」といったワードのほうがしっくりきます。実際、二拠点生活興味層のクラスタ分析をすると、「人生よくばりタイプ」の人たちが最も動きそうな兆しも出ていました。定性インタビューでの「(生活の場を複数持って)いいとこどりをしたいんです!」というコメントも印象的でしたね。
このようなターゲット像が見えてくると、二拠点生活に関する訴求や自治体のメッセージもガラッと変わるのではないでしょうか。調査レポートの「20~30代女性を動かす5つのヒント」にもつながっていきました。

─では、今後、自治体はどのようなことを意識したらいいと思いますか?
中田:気持ちはあるけれど、踏み切れないでいる人の背中を押す施策の実施でしょうか。軽い気持ちで二拠点生活を試せる環境をつくり、ハードルを下げることが大切なように思います。二拠点生活は意外と簡単だし、ハードルを上回る楽しいベネフィットがあることを伝えたいですよね。
小関:もう1つ、ヒントになるかもと思ったのが、その地域の人とのつながりが自然に生まれる場所の存在です。例えば今回の調査では、二拠点先に欲しいものとして「カフェ」を挙げる人がすごく多かったんです。
でも彼女たちは、お茶するお店がたくさん欲しいわけではない。カフェに求めているのは、出来上がった地域コミュニティにいきなり飛び込むのではなく、居心地の良い場所で顔見知りができ、そこから友達ができるという展開です。そういう気持ちに応える場所がその地域にどれだけあるかは、20~30代女性を動かすカギになり得ると思いました。

場所に縛られない自由を生かし、好きなまちに住んでみよう
─調査を終えた今、あらためて、二拠点生活の魅力をどのように考えていますか?
中田:私は、若い女性たちが自分の望む仕事やファッション、生き方を、主体的に選べる社会になってほしいという気持ちで『MORE』をつくっています。その観点でいうと二拠点生活は、自分の居場所のチョイスが増え、新たな人やカルチャーに出会い、多くのものを得られる魅力的なライフスタイルです。そうやって若いうちに価値観を広げると、人生の可能性も大きく広げられるのではないかと思います。
小関:今回の調査で出会った二拠点生活経験者はみんな、自分に対して自信がついたと話していましたね。全く別の場所で自分の暮らしを展開できたという自負が、次のチャレンジを生み出しているように思いました。

─二拠点生活者を受け入れる地方自治体のメリットもお聞かせください。
中田:二拠点生活によって、そのまちに深い関心を持つ人が増え、若い人が増えれば、地域が盛り上がりますよね。関係人口は増えますし移住につながるケースもあるでしょう。自治体にとって大きなメリットだと思います。
小関:住んでいる人たちが気づいていない、まちの魅力を発見してもらえることもメリットですよね。二拠点生活志向のある20~30代女性はシビックプライドが高い人が多く、現在住んでいる場所が大好きだし、二拠点先のまちも好きになって深く関わりたいと考えています。
そんな彼女たちは、まだ光が当たっていないまちの魅力を発見し、さらにそれを外にアウトプットしてくれるので、まわりまわって、住んでいる人たちのシビックプライドも育つ理想的なスパイラルが期待できます。
─最後に、地方創生や二拠点生活の今後に期待することを教えてください。
小関:心地いい居場所をたくさん持っていることは、幸せの指標の1つだと思います。だからこそ、二拠点生活が身近な選択肢として浸透して、自分の居場所を各地に持つ人が増えたらいいなと思います。
中田:技術が進歩し、働き方も多様化し、どこにいてもモバイルで仕事ができる人も増え、場所に縛られない自由を手に入れつつあります。これからはその自由を生かし、いろいろなまちに住むことを楽しむ人が増えるのではないでしょうか。
その結果、それぞれの地域の良さが磨かれて各地が盛り上がり、日本中が元気になったら本当に素敵だと思います。今回の調査では「目指したい未来」に近づけそうな手ごたえを感じました。形にできるよう次のステップもがんばりたいですね。
